コミュニティ運営のカスタマージャーニーマップとは?作り方から事例まで解説

コミュニティ運営におけるカスタマージャーニーマップとは、メンバーがコミュニティを認知してから参加し、ファン(ロイヤルメンバー)になるまでの一連の体験を可視化した図のことです。
このマップを作成することで、メンバーの行動や感情の変化を深く理解し、運営上の課題発見や改善策の立案に役立てられます。
本記事では、コミュニティ運営に特化したカスタマージャーニーマップの作り方から、具体的な活用事例までを解説します。

Contents

カスタマージャーニーとは?

カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知し、興味を持ち、購入や利用を経て、最終的にファンになるまでの一連のプロセス(旅)を指します。
このプロセスにおいて、顧客がどのような接点で、何を考え、どう感じて行動するのかを時系列で捉える考え方です。
ビジネスのあらゆる場面で顧客理解を深めるためのフレームワークとして活用されており、コミュニティ運営においても、メンバーとの関係性を長期的に築く上で非常に重要な概念となります。

コミュニティ運営にカスタマージャーニーマップが重要な理由

コミュニティ運営において、メンバーの定着や活性化は重要な課題です。
カスタマージャーニーマップは、これらの課題を解決し、メンバーにとって価値あるコミュニティを構築するための羅針盤となります。
感覚的な運営から脱却し、データに基づいた戦略的なアプローチを可能にするためのツールとしての必要性が高まっています。

メンバーの体験を可視化し、コミュニティの課題を特定する

メンバーがコミュニティに参加してから定着するまでの顧客体験は、必ずしも平坦な道のりではありません。
マップを作成することで、メンバーがどの段階でつまずき、どのような感情を抱いているのかを具体的に把握できます。
例えば、「入会直後に何をすれば良いかわからない」「投稿への心理的ハードルが高い」といった離脱につながる要因を可視化し、コミュニティが抱える本質的な課題を特定することが可能です。

運営チーム内でメンバー理解の共通認識を築く

コミュニティ運営には、複数の担当者が関わることが少なくありません。
カスタマージャーニーマップをチームで作成するワークショップなどを実施することで、メンバーに対する理解度や目指すべき体験の方向性について、チーム内での共通認識を形成できます。

これにより、個々の担当者が行う施策に一貫性が生まれ、組織として統一感のあるコミュニティ運営が実現します。

感覚的な運営からデータに基づいた戦略的な運営へ移行する

「イベントを増やせば活性化するはず」といった感覚的な判断に頼った運営には限界があります。
カスタマージャーニーマップを用いることで、各フェーズにおけるメンバーの行動や感情に基づいた仮説を立て、具体的な施策を設計できます。
施策実行後は、マップ上の指標を基に効果検証を行い、改善を繰り返すことで、データドリブンな運営体制へと移行できます。

これは、メンバーの成功体験を支援するカスタマーサクセスの観点からも、コミュニティの継続的なサクセスに不可欠です。

コミュニティ運営におけるカスタマージャーニーマップの基本構成

コミュニティ向けのカスタマージャーニーマップは、主に「横軸」と「縦軸」の要素で構成されます。
横軸でメンバーの体験の流れを追い、縦軸で各段階におけるメンバーの内面や外面の状態を深掘りすることで、多角的な分析が可能になります。
このフレームワークを理解することが、効果的なマップ作成の第一歩です。

横軸:メンバーがコミュニティを体験する段階(フェーズ)

横軸には、メンバーがコミュニティに参加してからロイヤルメンバーになるまでのプロセスを、時系列の段階(フェーズ)で設定します。
一般的なステージとしては、顧客ロイヤルティプログラムのジャーニーにおける段階と同様に「認知」「登録」「エンゲージメント」「維持」「アドボカシー」などが挙げられます。
これらのフェーズはコミュニティの目的や特性に合わせて柔軟に設定し、メンバーがどのような道のりを歩むのかを定義します。

縦軸:各段階でのメンバーの行動・思考・感情・接点

縦軸には、横軸で設定した各フェーズにおいて、メンバーがどのような状態にあるかを分析するための項目を設定します。
具体的には、「行動」「思考」「感情」「タッチポイント(運営との接点)」「課題」「改善策」などを設定することが一般的です。
これらの項目を通して、メンバーの具体的な行動だけでなく、その背景にある思考や感情、ニーズまでを深く掘り下げ、運営側が介入すべきポイントを明確にします。

【5ステップ】コミュニティ向けカスタマージャーニーマップの作り方

コミュニティ向けのカスタマージャーニーマップを作成する手順を解説します。
このプロセスを順番に進めることで、チーム内で共通認識を持ちながら、実用的なマップを完成させられます。

Step1:コミュニティ運営の目的とゴールを明確にする

最初に、コミュニティ運営自体の目的と、今回カスタマージャーニーマップを作成する目的を明確にします。
例えば、コミュニティのゴールが「顧客ロイヤルティの向上」であり、マップ作成の目的が「新規参加者の離脱率低下」である場合、特に「参加」から「オンボーディング」のフェーズを重点的に分析する必要があります。

目的を定めることで、マップ作成の軸がぶれなくなります。

Step2:コミュニティの核となるペルソナ(人物像)を設定する

次に、マップの主人公となるペルソナ(架空の人物像)を設定します。
既存メンバーへのインタビューやアンケート結果に基づき、年齢、職業、コミュニティへの参加動機、抱えている課題などを具体的に設定することが重要です。

このワークを通じて、チーム内で「誰のためのコミュニティなのか」という認識を統一し、メンバー視点での分析を深めます。

Step3:メンバーの行動段階(フェーズ)を時系列で洗い出す

設定したペルソナが、コミュニティを認知してからファンになるまでの道のりを、具体的な行動段階として時系列に沿って洗い出します。
例えば、「SNSでコミュニティを知る」「登録ページを閲覧」「登録完了」「初ログイン」「自己紹介を投稿」「イベントに参加」「他のメンバーの投稿にコメントする」といった具体的なステップを定義します。

Step4:各フェーズにおけるメンバーの行動・思考・感情を書き出す

洗い出した各フェーズにおいて、ペルソナが具体的にどのような行動をとり、何を考え、どう感じるかを想像しながら書き出していきます。
例えば、「初投稿」フェーズでは、「何を書いていいか分からない」「投稿ボタンを押すのに勇気がいる」といった内面を掘り下げます。
運営が提供するコンテンツ、サービス、イベントが、これらの思考や感情にどう影響するかを分析します。

Step5:浮かび上がった課題から具体的な改善策を立案する

マップ全体を俯瞰し、特にペルソナの感情がネガティブになっている箇所や、行動が停滞している箇所を「課題」として特定します。
そして、その課題を解決するための具体的な改善策を検討します。
例えば、「初投稿のハードルが高い」という課題に対して、「投稿テンプレートを用意する」「運営からお題を出す」といった施策を考えます。

必要に応じて、営業部門や広報部門とも連携し、実行可能なアクションプランに落とし込みます。

【目的別】カスタマージャーニーマップの活用事例

カスタマージャーニーマップは、作成するだけでなく、その後の運営に活かしてこそ価値が生まれます。
ここでは、コミュニティが抱える課題に応じてマップをどのように活用し、成果に繋げたのか、具体的な活用方法を目的別の事例として紹介します。

事例1:メンバーの離脱率改善に成功したオンラインサロン

あるオンラインサロンでは、入会後1ヶ月以内のメンバーの離脱率が高いという課題がありました。
カスタマージャーニーマップを作成し分析したところ、多くの新メンバーが「オンボーディング」期に何をすれば良いか分からず、孤独感を感じていたことが判明。

対策として、新メンバー専用のウェルカムセミナーを毎週開催し、運営者が積極的に交流する場を設けた結果、初期のエンゲージメントが向上し、離脱率の大幅な改善に成功しました。

事例2:投稿の活性化を実現したファンコミュニティ

製品のファンが集まるコミュニティで、一部のコアメンバーしか投稿せず、多くのメンバーが閲覧専門(ROM専)になっている状態が課題でした。
マップ分析から、「何を投稿すれば良いか分からない」「自分の投稿が他のメンバーにどう思われるか不安」といった心理的ハードルが原因だと特定。

そこで、運営側がオウンドメディアのように定期的に投稿テーマを投げかけたり、写真投稿キャンペーンを実施したりすることで投稿のきっかけを提供。
結果的に投稿数が飛躍的に増加し、コミュニティ全体の活性化が実現しました。

事例3:顧客満足度向上に繋がったBtoB(法人間取引)ユーザーコミュニティ

あるSaaSツールを提供する企業では、ユーザーコミュニティを運営していましたが、活用方法に関するサポートへの問い合わせが多い状態でした。
マップを作成し、ユーザーがつまずくポイントを特定したところ、特定の機能の初期設定で離脱していることが多いと判明。
対策として、つまずきやすいポイントを解説する限定ウェビナーの開催や、設定マニュアルのダウンロードを促進。

ユーザー同士で解決策を教え合う文化も醸成され、顧客満足度の向上とサポートコストの削減に繋がりました。
将来的にはアップセルも見据えています。

マップ作成を成功に導くための3つのポイント

効果的なカスタマージャーニーマップを作成し、コミュニティ運営に活かすためには、いくつかの重要なポイントがあります。
これから紹介する3つの点を意識することで、マップが形骸化することを防ぎ、継続的な成果を生み出すツールとして機能させられます。

理想や思い込みではなく、事実に基づいて作成する

マップ作成時には、運営側の「こうあってほしい」という希望的観測や思い込みを排除することが不可欠です。
実際のメンバーへのインタビュー、アンケート調査、コミュニティ内の行動データなど、客観的な事実(ファクト)に基づいて作成してください。
事実に基づいたマップだからこそ、的確な課題発見と有効な施策立案が可能になります。

作成自体を目的とせず、継続的な改善を前提とする

カスタマージャーニーマップは、一度作成したら完成というわけではありません。
市場環境やメンバーのニーズは常に変化します。
マップを基に実行した施策の効果を測定し、その結果をマップにフィードバックして、定期的に見直しと改善を繰り返すことが重要です。

PDCAサイクルを回すためのツールとして位置づけ、常に最新の状態に保つ意識が求められます。

関係者全員で共有し、常にアップデートできる体制を整える

作成したマップは、運営チーム内だけでなく、マーケティング、営業、開発といった関連部署のメンバーにも共有し、いつでも閲覧できる状態にしておきましょう。
関係者全員がメンバー視点を共有することで、部署を横断した一貫性のある体験を提供できます。

また、誰かが気づいた変化や新しいインサイトを、すぐにマップへ反映できるような、風通しの良い体制を整えることも大切です。

コミュニティ運営支援 カスタマージャーニーマップに関するよくある質問

ここでは、コミュニティ運営におけるカスタマージャーニーマップの作成や活用に関して、よく寄せられる質問とその回答を紹介します。

Q1. コミュニティのペルソナはどのように設定すれば良いですか?

既存メンバーへのアンケートやインタビューに基づき、共通する特徴や課題を抽出して設定します。
理想像だけでなく、実在するメンバーのデータを基に、具体的な人物像(背景、目的、悩みなど)を詳細に描くことが重要です。

Q2. マップ作成に必要な情報(データ)はどこから集めれば良いですか?

メンバーへのアンケートやインタビュー、アクセス解析データ、コミュニティ内の投稿内容や行動履歴などから収集します。
定性情報(声)と定量情報(数値)の両方をバランス良く集め、多角的に分析することが効果的です。

Q3. 作成したマップはどのように運営チームに共有するのが効果的ですか?

作成過程を共有するワークショップ形式が最も効果的です。
完成後は、いつでも誰もが閲覧できる場所に保管し、定例会議などでマップを基に進捗確認や施策検討を行うと、共通認識が醸成され、形骸化を防ぎます。

まとめ

コミュニティ運営におけるカスタマージャーニーマップは、メンバーの体験を深く理解し、エンゲージメントを高めるための強力なツールです。
マップの作成を通じてメンバーの視点に立つことで、これまで見過ごされてきた課題を発見し、データに基づいた戦略的な施策を立案できます。
この記事で紹介した作り方や事例を参考に、ぜひマップ作成に挑戦してみてください。

重要なのは、一度作って終わりにするのではなく、コミュニティの成長に合わせて継続的に活用し、改善を続けていくことです。

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