事業の戦略を立てていくにあたって、人材や資金と並んで大切なのが情報です。加速するIT社会に適応して競合他社に差をつけるには、情報やデータが鍵になるでしょう。
この記事では、データ活用の基本情報やメリット、データ活用の方法などを解説していきます。
データ活用はさまざまな業種で役に立つだけでなく、大手企業や中小企業で幅広く取り入れられている重要なものなので、データ活用を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
Contents
データ活用の基本情報
業務を行っていく上で、集まった情報などをビジネスに役立てている企業は多いでしょう。しかし、情報に社員の主観が入っていたり集めた情報の整理が不充分だったりして、十分に役立てられていないケースも珍しくありません。
データ活用は漠然と情報を処理するのではなく、より洗練されたシステムを用いて、情報の有効性を高めることが重要です。ここでは、データ活用とは何か、ビジネスにおけるデータ活用の重要性などを解説していきます。
データ活用とは
社員や顧客のデータ、取引や販売などのデータ、収支に関するデータなど、企業は日常的に情報を取り扱っています。データ活用は文字通り、そういった各種情報をビジネスに役立てることです。
しかし、一回だけデータを利用するのではあまり意味がありません。普段の業務の中で継続的にデータを利用して、業務の判断や発見につなげられなければデータ活用とはいえないでしょう。
データ活用は、日々の業務で集めたデータを分析してビジネスに利用し、効率的・合理的に売上を伸ばすための方法です。
ビジネスにおけるデータ活用
ビジネスにおけるデータ活用には、対外部の「エクスターナルフォーカス」と対内部の「インターナルフォーカス」の2種類があります。
データ活用は情報戦略が重要となってくる今後のビジネス社会において非常に有効で、外部と内部の2つの方向性からアプローチすれば、さらなる効果が期待できるでしょう。
エクスターナルフォーカス
エクスターナルフォーカスは、対外的なデータ活用の手法です。自社にフォーカスするのではなく、外部の顧客やマーケットのデータを活用します。
具体的なエクスターナルフォーカスの方法としては、顧客の行動データを分析して顧客満足度をさらに高める、市場状況からニーズを読み取り新たな商品・サービスの開発に役立てるなどです。
ビジネスにおける意思決定を最適にできるといった効果が期待できて、売上アップや利益の強化を行いたいときなどに有益です。
インターナルフォーカス
インターナルフォーカスは、自社内部に注目するのが特徴です。業務コストやワークフローを一元管理して見える化することで、組織の利益性を高めます。
具体的には、見える化によって無駄を省いた業務の効率化やコストカット、製品やサービスのクオリティ改善などです。
これらの対策によって、赤字体質からの脱却や収益構造の強化を目指せます。自社の内部的な問題を解決するためには、インターナルフォーカスを行いましょう。
企業で部署ごとに活用できるデータの事例
部署によって役割が違うため、活用したいデータも異なってきます。
例えば、営業部門なら顧客データや商談に関するデータが活用可能です。商品別・販売地域別の売上データなども有用性が高いでしょう。
また、人事部では社員名簿や勤務状況などの社員データ、求人コストや求人の応募数などをまとめた求人データなどが重要視されます。
さらに、マーケティング部門なら広告の流入数や反応、イベントの集客数や参加者のデータなどが活用可能です。このように、実際の企業では部署ごとにさまざまなデータが活用されています。
データ活用のメリット
データ活用は有効性が高く、検討している企業も増えています。しかし、他の企業がやっているからではなく、「データ活用を行うことでどのようなメリットが得られるのか」を明確に分かっていなければ、実際にデータ活用を行ったところで高い成果は得られないでしょう。
ここでは、データ活用の主なメリットを2つ紹介します。
- 課題の解決や事業拡大へのヒントを得られる
- 迅速な意思決定ができる
それぞれ解説していくので、見ていきましょう。
課題の解決や事業拡大へのヒントを得られる
データ活用でより効果的に情報を分析してビジネスに生かせれば、課題の解決や事業拡大に役立ちます。
例えば、情報を一元管理・可視化することで、これまで見逃していた問題を把握したり、課題が解決できなかった原因が見えてくる可能性があるのです。
また、データ活用でデータを可視化すれば、複数のデータを組み合わせてより複雑な情報分析が行えるようになります。それによって自社の改善点や強み、消費者の行動やニーズなどが明確に分かれば、事業拡大にも有効です。
迅速な意思決定ができる
ビジネスと行っていく上で、一つの行動で大きく売上が左右するというのは珍しくありません。例としてあげられるのは、取引や業務に関する意思決定でしょう。
一つの決定によって今後の業績に影響する可能性もありますが、経験や勘に基づいた主観的な意思決定では不安が大きく、周囲との認識の違いなども生まれてしまいます。
しかし、データ活用を行えば、現状の把握やデータに基づいた将来の予測がしやすくなるため、根拠に基づいた意思決定がしやすいです。しっかりとデータでの根拠があるので周囲との認識の違いなども起こりにくいでしょう。
データ活用の方法
ここからは、具体的なデータ活用の実施方法について見ていきましょう。いかにデータ活用が重要であっても、取り入れ方を間違えてしまうとうまく機能しない可能性があります。
ここでは、データ活用の方法を4ステップで紹介していくので、しっかりとチェックしていきましょう。
- 数字をグラフなどで視覚的に見えるようにする
- 可視化したデータを分析して読み解く
- 戦略を立てる
- 実行・検証を行う
それぞれの項目ごとに解説していきます。基本となる4ステップを押さえて、自社に最適な導入方法を検討してください。
数字をグラフなどで視覚的に見えるようにする
企業が収集するデータは量が膨大で、一目では分かりにくいです。そこで、まずはこれを整理整頓していくところからはじめていきましょう。
具体的には、Excelなどで管理されている数字データをグラフやイラストなどで視覚化して、一目でデータが分かるようにします。
数字からでは把握しにくい・見逃しやすい情報などを、誰でもすぐに直感的に理解できるようにすることが可能です。
可視化したデータを分析して読み解く
データを可視化したことで、売上の増減などの数字の傾向が分かりやすくなります。さらに、他のデータと照らし合わせれば、さらにそのデータを深掘りして分析できるでしょう。
データの規則性や異常値、因果関係、相関関係など、さまざまな角度からデータを解析すれば、ビジネスで大いに役立ちます。
なお、情報分析にはクロス集計やクラスタ―分析といった多彩な手法があるので、それぞれの長所や短所も考慮しながら自社に適したものを選んでください。
戦略を立てる
分析結果を元に戦略を立てて、最終的な意思決定を行います。これまでは経営者の経験や感覚に大きく依存してきましたが、データ活用によってその在り方が変わってきました。
データ管理を行うことで、どの部分を改善すれば良いのか、どこに力を入れると売上につながるのかなど、明確な根拠を元に具体的な戦略が立てられます。
推測や勘を元にした意思決定はリスクが高く失敗する可能性もありますが、データ分析を元に立てた戦略は失敗する危険性が少ないので安心です。
実行・検証を行う
上記のステップに基づいて立てた計画は、事前の予測と実際の効果の違いを確認することが大切です。予測と結果が近ければさらなる改善を目指し、想定通りの結果が得られなかった場合には原因や修正点などを明確にして、今後に役立てましょう。
改善や修正を行いながらPDCAのサイクルを繰り返していけば、さらに高度なデータ活用が可能になり、より洗練した戦略の立案や経営体制の強化につながります。
データ活用を一度実施して失敗したとしても、それにとらわれずに継続的に実行・改善を目指すことが大切です。
データ活用の事例を業種ごとに紹介
データ活用は幅広い業種で導入が進んでいますが、それぞれの企業の目的や利用するシステムは千差万別です。
ここでは、業種ごとのデータ活用の事例を3つ紹介していきます。
- サービス業
- 製造業
- 小売業
データ活用を検討している方は、自社の業種に近い事例を参考にしてみてください。
サービス業
サービス業でデータ活用を行えば、過去の売上データなどを分析して、今後の来店者数や注文状況の推測が可能です。
天気ごとの来店者数の推移やイベントなども考慮した上で判断できるので、普段とは違う条件でもシフトの調整や商品発注を正確に行えます。
その結果、コストカットやクレームの発生、営業機会の逸失を予防できるでしょう。また、チェーン店では全国の店舗ごとの状況を分析できるため、人気店舗の来店者数が多い理由や人気がない店舗は何が原因で人が来ないのかなど、新たな発見が得られる可能性が高いです。
製造業
製造業は機械化や自動化、ITテクノロジーの浸透もあって、データ活用との親和性は高くなっています。
具体的には、リアルタイムで欠陥の発生具合や生産スケジュールの進捗を確認できる生産管理データ、受発注などのシステムとの連携などです。
さらに、職人の経験や技術に関するデータを分析したり、さまざまな試験方法の結果を解析して製品のさらなるクオリティの向上を目指したりと、広い範囲で有効活用されています。
小売業
小売業では主に、需要と供給の予測と新事業計画の2つの目的で、データ活用が行われている傾向です。
需給予測ではこれまでのデータに基づいて受発注を最適化し、在庫切れや過剰発注のリスクを低減させています。天候やイベントなどの情報も統合すれば、より精度が高い予測が可能です。
新事業の計画では顧客や売上などのデータを活用して、マーケティングに役立てられます。顧客情報や従業員データ、商品の陳列データなどを活用して、売上の向上につなげていきます。
金融業
金融業では、インターネットバンキングによる膨大な情報管理や、投資を行う際のトレンドの把握・顧客行動の分析などに役立っています。
インターネットバンキングは、預金残高の確認や振込などの処理を正確に行わなければいけません。ですので、データ活用が重要な役割を果たしています。
また、投資に関する情報を集めてデータ分析を行うことで、顧客に対しての最適な投資のアドバイスなども可能です。金融業は特に扱うデータが多いため、情報の一元管理や分析が重要とされています。
社内でデータ活用を積極的に行っていくには
データ活用は、社内の一部の人間が推進していても目に見える効果は期待できません。効率的に行っていくためには、各部門のデータを集結し、一元管理・可視化を組織的にするのが重要です。
しかし、新しい取り組みに対して消極的な企業では、スムーズに取り入れるのは難しいでしょう。
ここでは、積極的にデータ活用を行っていくための方法を3つ紹介します。
- 経営層から活用して普及
- データ活用のための人材を確保
- データは正確性を保ち信頼してもらう
それぞれの方法について解説していくので、見ていきましょう。
経営層から活用して普及
データ活用は組織全体の意識変化が必要です。大掛かりな取り組みになるため、一部の社員が使っているだけでは、組織全体には浸透しません。
そこで、経営者が積極的に働きかけ、データ活用を行う意義や効果を周知することが大切です。そのためには、まず経営者が進んでデータ活用を行っていきます。実際に活用して利用する目的や効果を把握すれば、従業員への説得力が増すでしょう。
トップダウン式にデータ活用の仕組みを浸透させていけば、スムーズに取り入れやすいです。
データ活用のための人材を確保
データ活用は一日二日でできるものではありません。そのため、他の業務との兼任は難しいですし、そもそも知識を持っていない人が行っても高い効果は得られないでしょう。データ活用を扱うためには、データ活用専門の人材を採用・育成していく必要があります。
人材を採用するなら、IT関係について専門性が高い、データ活用のスペシャリストを確保するのが望ましいです。データの管理やシステムの運用については高度なノウハウが必要になるため、専門家がいると頼りになります。新たな人材を育成する場合にも、知識を持っている人がいるだけで育成が楽になるでしょう。
データは正確性を保ち信頼してもらう
実際に企業でデータ活用のシステムを導入しても、最初は半信半疑の社員も多いでしょう。これまでのやり方に慣れているなどの理由で、変化を歓迎するとも限りません。
データ活用に積極的になってもらうためには、データ活用に対する信頼を高めて有効性を感じてもらうのが重要です。
データが正しくなければ、「データが間違っていて仕事では使えない」、「データ活用をしたところで効果がない」といった印象になってしまいます。データは常に正確に保ち、有効に活用できる状態にしておきましょう。
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データ活用とは、顧客データや収支に関するデータなど、日々の業務で取り扱っている情報をビジネスに役立てることです。
データ活用を行えば、企業の課題の解決や事業拡大へのヒントを得られる、根拠に基づいた意思決定が迅速に行えるなどのメリットがあります。しかし、企業がデータ活用を効率的に行っていく上では、専門知識を持った人材が不可欠です。
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